四万十川に冬がやってきました。早いものでもう年末です。この時期になると、四万十川の川底が緑色に色付いてきます。待ちに待った天然青のり、スジアオノリが芽生え始めます。
四万十川で専業の川漁師としてやっていくには、このスジアオノリ漁を避けて通ることはできません。それほど川漁師の収入としてのウエイトが大きいのです。
ただし、それなりの収入を得ようとするなら死ぬ気で頑張らないとおこずかい程度で終わってしまうのもこのアオノリ漁の厳しい部分なのです。だって、想像してください。乾燥した青のりで100キロから上の単位での水揚げと生産作業を同時にこなさなければならないのですよ、綿のようなノリを何百キロってすごいことだと思いませんか?厳しい漁です。川漁師で食っていくんだ!という強い強い情熱がないと、途中でへこたれてしまいます。
しかし、それも全てはこのアオノリがしっかり育ってくれないと話になりません。過去にも収量が大変少ない、厳しい年もあったのです。どんなに待ってもアオノリが生育していかず、やっととれても短い青のりで手間ばっかりかかってちっとも目方がのらない、なんてことも良くあることで、それゆえ毎年今年はちゃんと育ってくれるだろうか?とヒヤヒヤしながら成長を見守っていくのです。
まずは漁の準備からです。 国交省から河川敷の土地をアオノリ漁の為に半年借り上げます。もちろんこれにはお金もかかります。まずは毎年、草刈りから始まります。半年、ほったらかしておいた河川敷の土地です。それはしつこい雑草がもはや藪になっていて、今年は特にしつこくて雑草がちょっとした木みたいに成長してやがって、草刈りに二日みっちりかかりました。一日中慣れない草刈り機を肩からぶら下げて腰を右に左に振り振り草を刈るので、エンジンの振動で手が夜になってもビーンっとしびれたまんま。肩はしみる様な痛みでガッチリ肩こり。腰は前にかがんでも後ろに伸ばしてもギシギシと音をたててイテテ・・・
次に青のり漁の作業の為に必要な小屋を建てます。これも結構手間がかかりますよ。毎年同じように造るのですが、ちょっとずつ微妙に寸法や勝手が違っていちいち調整するのがほんとにめんどくさい。はしごに乗ったり降りたり、地面を掘ったり丸鋸で材料を切り刻んだり、作業をしているとあっという間に日暮れがやってきます。
最後に竹を約170本、地面に打ち込んで、それに紐を張り巡らせて青のりの干場の完成です。
今年は数年使いまわしていた竹が大部分弱ってしまい、100本以上の竹を竹藪から切り出したりで、とっても時間がかかりました。これを終えるとまずは一段落、ほっと一息つけます。
あとは洗濯機を脱水のために使うのですが、それのための屋根をつけたり、洗いかご という青のりを洗って形を整えるために使うカゴを新たに作ったり、肝心の青のりを採取する漁具である カナコ という金属製の漁具を毎年の経験から更に改良して設計し、作ってみたり と、とにかくやることが満載なアオノリ漁。通常なら洗いかごも、カナコも一度作ればだいたいそれで終わりなんでしょうが、やっぱり作業効率、生産効率、漁獲高を人より沢山上げていきたい、と考えたらしょっちゅう試行錯誤してトライしていかないといけません。川漁師として食っていくのに、情熱が必要だといつも思っていますが、この情熱がないと、特にしんどい、辛い作業ばかりのアオノリ漁で人並み以上に伸びていくのは困難だと思います。
私にその情熱が無くなった時、これを乗り切る自信はありませんから・・・
とにもかくにも、まずはスジ青のりが順調に生育してくれるのを祈るのみ。今年もたくさん採れますように!
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