四万十川のスジアオノリ 今年は壊滅でした・・・・

今年の四万十川 青のりはまったくもってダメでした。スジアオノリは温暖な冬には成育が悪い傾向があり、ここ数年、収穫時期が一年で最も冷え込む二月近くにずれ込んでいました。通常なら年末か、年明け位から収穫が始まるものだったのですが、地球温暖化の影響なのか、一ヶ月近く収穫時期が短くなっています。そんな暖冬の年でも雪がたくさん降って、山から雪代の冷たい水が入ると、きまって青のりが成長を始めてきました。今年も同じように雪の降ったタイミングで一気に素晴らしい成長を始めたのですが、丁度その時が大潮の潮周り。おそらくは接岸していた温海水が大潮のタイミングでどんどん川に入ってきたのでしょう。今年は海水温がとても高い年でしたので、伸びていた青のりが一気に、ものの三日ほどで弱り、腐って流れてしまいました。川底一面の青のりがが数日で消失してしまったのです。塩分濃度もかなり高かったようで、川で作業していた時に着ていた雨合羽が塩で真っ白になっていたほどでした。

四万十川の河口には、かつて砂の岬 砂州が横たわており、それが自然に潮の干満を穏やかにする役目を担っていました。現在はありとあらゆる、いらん工事の結果、砂州は完全に消失してしまっています。

今回のような海水温が高い年に、この砂州が機能していたならもしかしたらこんな悲惨な状況にはならなかったのでは?と思います。何十年も漁に携わっているベテラン先輩方も、こんなに全く採れなかった年は過去に無い!とおっしゃっています。ダメな年でも多少の収穫はあったんだそうです。

ただ、問題はこの砂州だけではないでしょう。温暖な気候、温かい海水温。そんな条件でもスジアオノリが成長した年はあったのです。学者達は成長する適水温が15度などといっていますが、私達現場の実感は全く違います。毎年成長の兆しが見えるのは、冷え込んで水温が10度を切った頃から始まっています。この辺の現場と机上とでの意見のズレも対策を講じる上でよろしくありませんね。

さて、わたしが川漁師になってまだ6年ほどですが、たった6年でも川は凄い勢いで変わってきています。 支流の山林伐採の後にその川が土砂まみれでダメになってしまうのは散々経験済みで、漁場がどんどん消失していってしまう苦しみにうちひしがれていましたが、このスジアオノリの漁場である角崎地区もその例外ではありません。とにかく年々川底に土砂が溜まっていって青のりの生育の礎となる石をどんどん埋めていってます。

四万十川は沢山の支流からなっています。その支流を、または支流流域の山を、公共事業や国の補助金により山林伐採の作業道をつける事業などで開発して、とうとう本流までが断末魔を上げ始めています。

まず、上記のこの二つの在り方を今一度、川を保全する視点で本気で考えていかねばいけない。もう待ったなしで対策しないと手遅れになってしまいます。

スジアオノリには年により冬のノリが一度終わった後、春にもう一度のりが10日程成長することがあり、これを我々は春のり、と呼びますが、これは冬のノリと違い比較的深場において成長してきます。

しかし、今年はその深場が・・・・今まで小石混じりの玉石だった底が、砂浜のような砂だらけ・・・・・・ほんとにびっくりするくらいの砂ですよ。砂にはスジアオノリは付きません。成長するための種が石などの固形物にできるわけですが、砂に種はつきませんから。写真の岸辺などは、ゴロゴロの歩きづらい玉砂利、小石の岸辺で砂なんかほとんどなかったのに、岸辺ですらこの砂ですから。深いところはもっと砂だらけでそれは悲惨ですよ・・・・・

四万十川、最後の清流といわれて全国的にも知名度が素晴らしい。その名前の恩恵にこの地域はあやかっています。このままいったらもうそんな甘ったれたことできなくなりますよ。なんでも四万十って名前をつけりゃいい、四万十川がダメになったら全部終わりじゃないですか。言っときますが、これだけ有名な川なんだから、悪名が広がるのも早いですよ。そうなったら終わりなんです。この地域が。

いまはまだ四万十川はかろうじてその名声にふさわしい姿を保っています。まだ全体的にはすばらしい川です。

けど、このままいったらそれもそう長くは無い。

なんとか四万十川、守りたい。切なる思いです。

 

 

 

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