9月に入ると、急に空の色と日差しの光線が変わってきます。僕の一番大好きな季節、秋の始まりです。流域に真っ赤な彼岸花が咲き、柔らかくも力強く、しっかりと山の木々の輪郭を表すように照りつける初秋の日差しと宇宙まで真っ青に抜ける天高い高知の秋の空。 朝晩と涼しい風が頬をなで、水に浸かりっぱなしだと時には冷えることも。そんなときは日差しで温まっている大岩の上で横になったり抱きついたりしてあったまる。
川漁師やってて一番気持ちがいい季節なんです。 そして、四万十川の天然うなぎもこの頃から雨の度に上流から下流に降りてきます。いよいよ四万十川の下り鰻の登場です。
秋もだんだん深まってくると、産卵のために海に降りていく個体が見え始めますが、こういうのは餌を食べることをやめてしまい、なかなかウナギの仕掛けには入ってこなくなります。これらを捕獲するのに、このイシグロ漁という漁法が向いているのです。
イシグロとは、石を積み上げてウナギの寝床を造ってやる、石の蔵?倉?こんな感じが語源だったような・・・・・とにかく、川底を鍬で掘って、そこに大きめの石をたくさん放り込んで一つの塚を作ってやるわけです。
通常は潮の干満のある汽水域に造り、干潮時に作業します。一度イシグロを造ったら、だいたいは最低でも次の潮、例えば、大潮の干潮時に造ったら、次の潮周りの大潮までは自分の場合は寝かせておきます。
ちょうどの雨が降ったりしたらウナギは動きますので、そんなときは雨後の干潮時に作業するときもあります。作業といっても積み上げた石をはぐっていき、中にいるウナギを捕まえるだけなんですが。
なんとも原始的、しかし、ウナギの生態を利用した漁なのです。
このイシグロ漁、効率よく捕獲するには雨が絶対条件になります。先程も申し上げたとおり、雨の度に上流からウナギは下ってくるのです。
しかし、なかなか自然ってのは自分の思い通りにはなってくれないもんで・・・・・・ちょうどの雨ってのがなかなか難しいのです。天気予報で秋雨前線や台風の影響で雨がたくさん降るという予報が出ていてもたいして降らなかったり、逆に台風で災害級にでかいのがやってきてイシグロごと全部流されてしまったり・・・・・・イシグロ造るのって結構しんどいのですよ。少ない数ならまだしも、漁師としてつくる場合はある程度の数を造りますので・・・・・
干潮の間に大きめのイシグロをちゃんと造るには2個か3個がやっとこさ。重たい大きめの石を川をあっちこっち川船で動いて探して集めておいて、それを積み上げていくのです。時には重い石を投げ込む時に腕の腱を痛めてしまったり、水の中で穴掘って石拾って投げての繰り返しで背中、肩、腰、がパンパンになったり。
実はこれ書いてる今もブーメラン台風とかの進路をピリピリしながら心配している最中なんですよね。あんまし大水が出ないように祈っていますが、自然の前では、なすすべもないのです。
コメント